Oさんよりジャンダルム登山のお誘いがあり、奥穂高岳から西穂高岳への縦走で行ってきた。流石に一般ルート最難関と言われるだけあり、終始息の抜けないルートだった。特に序盤の馬の背の下りは両側が切れ落ちていることもあり、スリル抜群であった。ルート的にはホールドもスタンスも充分にあり、クライミングの基本がしっかりできていれば特に通過には問題はないだろう。要所には鎖もあったし、マーキングも結構ある。槍ヶ岳北鎌尾根のようなルートファインディングの難しさはないが、縦走路だけあり、登りと同じぐらいにクライムダウンが多かったのが、結構、精神的にも肉体的にも疲れた。おかげで、翌日は激しい筋肉痛であった。
【日程】2019年10月16日(水)〜17日(木)
【山域】北ア・南部
【場所】奥穂高岳・ジャンダルム・西穂高岳
【メンバー】Oさん、マメゾウムシ
【天候】10/16 晴れ、10/17 晴れのち曇り
【コー スタイム】
10/16 新穂高温泉無料駐車場5:56〜穂高平小屋6:58〜白出沢出合7:43-53〜重太郎橋8:55-9:14〜荷継小屋跡10:09-18〜アブナイヨ岩12:00〜穂高岳山荘13:56
10/17 穂高岳山荘5:30〜奥穂高岳6:15-29〜ジャンダルム7:57-8:14〜天狗のコル10:01-10:11〜天狗の頭10:28〜間ノ岳11:29〜P1(赤岩岳)12:53〜西穂高岳13:01-07〜西穂独標14:21〜西穂山荘15:13-25〜西穂高口16:28
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1日目(10月16日)
3000mの高山では、いつ雪が降ってもおかしくない10月中旬。この時期は降雪がなくても、高山では凍結しているリスクは高い。奥穂から西穂の縦走路は一般ルートとは言え、アルパインクライミングなみに技術的にも体力的にも高いレベルが求められる岩稜ルートである。山のキャリアはまだ浅いOさんであるが、無雪期は私が沢登りを中心に指導をしてきたこともあり、技術的にはこのルートを充分にクリアできるレベルと判断した。一方で、体力面、特にスピードに少々危惧を感じるところはあったが、時間がかかった場合は西穂山荘に宿泊すればよい。あとは私のサポートがあれば、なんとか行けるだろうと判断した。日程は平日の晴れ予報の日を休暇取得で選んだが、凍結のリスクは行ってみないとわからない。風が強い場合や凍結している場合は、奥穂高岳ピストンに変更もありいうことで、とりあえず奥穂高岳までは行ってみることにした。

新穂高温泉よりスタート。車は登山者用無料駐車場に駐めた。平日だけあり、駐車している車は少なかった。

右俣林道を進む。

穂高平小屋を通過。

白出沢出合にて休憩していると、年輩の男性が追いついてきた。そのおじさんもジャンダルムに行くとのことだが、ヘッデンの乾電池を忘れたらしい。翌朝はヘッデンを点けて日の出前に早立ちする必要があるので、ヘッデンは必需品である。おじさんは穂高岳山荘に乾電池があるか電話をした際に、ジャンダルムの状況も聞いていた。小屋の人からは、凍結しているかもしれないので、止めたほうがよいと言われたそうだ。その後、そのおじさんは登ってこなかったので、どうやら諦めて引き返したらしい。少々不安な情報を聞いてしまったので、私たちもテンションが下がるが、とりあえず奥穂高岳への登山道を進むことにする。

後ろを振り返ると、笠ヶ岳と抜戸岳。

先日の台風による被害があったのか、登山道上に倒木あり。

白出沢に下りる。

重太郎橋を対岸に渡る。

白出沢の右岸につけられた石切道を進む。

鉱石沢を渡り、その後は樹林帯を登る。

荷継小屋跡で休憩。

荷継沢を対岸に渡る。

このあたりの紅葉の色づきはちょうどよい。

白出沢の長い登りが始まる。

標高差800mの単調なガレ登り。
稜線は見えているが、なかなか近づかない。ガレ登りもルートファインディングが大事で、大きな岩のある所を登っていく方が足下が安定していて楽である。

アブナイヨ岩を通過。ここから穂高岳山荘まで130分らしい。

少しずつ稜線に近づいていく。

ついに穂高岳山荘が目の前に。ここまで凍結箇所もなく、ほぼ無風で寒さは感じない。明日もこの天気ならば、ジャンダルムへは行けそうだが。

本日の宿である穂高岳山荘に到着。新穂高温泉から8時間が経っていた。
涸沢カールを見下ろす。

前穂北尾根。

早速、宴会開始。平日だが、人気エリアだけあり、宿泊客はそこそこ多かった。
穂高岳山荘の夕食。翌日に備えてご飯のお替わりを2回もしてしまった。寝不足だったこともあり、夕食後はすぐに寝入ってしまったが、深夜に目が覚めてしまった。
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2日目(10月17日)
深夜に1度目が覚めてからは、そのまま起きたり眠ったりを繰り返して、起床時間の4時半を迎えてしまった。

外はすぐに白み始めた。

穂高岳山荘名物のお弁当である朴葉寿司を食べてから出発。結構ボリューミーで朝からガッツリという感じ。
まずは奥穂高岳を目指して登る。天気は今のところ良好だが、午後からはガスが出る予報だ。

奥穂高岳へ登る途中で日の出を迎える。

目的地であるジャンダルムが見えた。

槍ヶ岳もくっきり。

奥穂高岳に到着。凍結箇所もなく、風の強さも気温的に充分に耐えられる程度だ。これならば行けると確信し、ジャンダルムへ進むことを決断する。先行者も1名いた。

念のため、ハーネスを装着して、ジャンダルムへの縦走路に入る。いよいよ馬の背の下りだ。

両側が切れ落ちている高度感抜群の狭い尾根をクライムダウンする。

3点確保で一歩ずつ慎重に下れば問題はない。

馬の背を無事下り終わると、次は奥穂高岳とロバの耳との鞍部を目指す。落石が起きやすそうな岩場を下る。

正面にジャンダルム。

鞍部からはロバの耳とジャンダルムを見上げる。

鞍部からはロバの耳への登り。その後、ロバの耳の鎖場のトラバースに入り、最後はジャンダルムとの鞍部に下りる。

ジャンダルムは基部をトラバースして、西穂側から登りやすそうな所を登った。後で気がついたが、正規ルートはもっと西穂側へ回り込んでいた。このあたりからガスが出始める。

正規ルートで縦走路へ戻ったが、最後は少々ショートカットした。

天狗のコルへの下りに入る。

垂直な鎖場の下り。スタンスはあるので問題ない。

ガスの中の狭い稜線歩き。

正面に天狗の頭。

天狗のコルに10時に到着。ここから岳沢へエスケープは可能だが、縦走を続ける。ここまで2名とすれ違う。

天狗の頭への急な登り。

天狗の頭に到着。

次は間ノ岳を目指す。

逆層スラブの長い鎖場の下り。登山靴のソールのフリクションを使って下る。

正面に間ノ岳。

間ノ岳を越える。

鎖場のトラバース。

鎖場の垂直な登り。

西穂高岳方面がガスの中にうっすらと見えた。

P1に到着。西穂高岳はいよいよ次のピークだ!

シラタマノキ。サロメチールの匂いがする。

ついに西穂高岳に到着。

ガスの中を下る。独標までは岩場が続くが、緊張感は多少は和らぐ。

西穂高岳独標を通過。西穂高岳からここまで11のピークを越える。ここからロープウェイ駅まではコースタイムで2時間。ロープウェイの最終時刻は16時45分で、現在の時刻は14時21分。はたして間に合うだろうか?

ロープウェイの西穂高口駅が見えた。

雲の下に出て、丸山を通過。

正面に焼岳と左に上高地。

西穂山荘に到着。ここからロープウェイの駅まで1時間だが、まだロープウェイ最終時刻まで1時間半ほどの余裕がある。なんとか間に合いそうだ。

Oさんはお疲れ気味だが、もう少しのガンバ!

ロープウェイ最終時刻の15分前に西穂高口駅に到着し、無事最終便に乗ることができた。ここまで11時間行動だった。

下山後は、新穂高温泉のひがくの湯で汗を流す。入浴料は750円だが、登山者は自己申告にて700円に割引される。うまい棒も食べ放題である。平日で時間も遅かったので、浴槽は独り占めだった。夕食もここでいただいた。
今回は10月中旬といういつ雪が降ってもおかしくない時期でありながら、稜線の気温は0℃ぐらいで、降雪も凍結箇所もなく、風もそれほど強くもなかったのは幸いだった。縦走日は午後からガスは出たものの、無事、ジャンダルムの頂に立ち、西穂まで縦走することができた。この縦走に時間がかかった場合は西穂山荘泊も考えていたが、最終のロープウェイ時刻になんとか間に合うことができ、その日のうちに新穂高温泉に下山できたのはよかった。Oさんにとっては9月の鳶谷での沢登りに引き続き、ハードな山行の連続になってしまったが、どちらもしっかり成功させたことは自信になるだろう。
奥穂高から西穂高までの縦走路は流石に一般ルート最難関と言われるだけあり、終始息の抜けないルートだった。特に序盤の馬の背の下りは両側が切れ落ちていることもあり、スリル抜群の高度感であった。一方で、ルート的にはホールドもスタンスも充分にあり、クライミングの基本がしっかりできていれば特に通過には問題はないだろう。要所には鎖もあったし、マーキングも結構ある。槍ヶ岳北鎌尾根のようなルートファインディングの難しさはないが、縦走路だけあり、登りと同じぐらいにクライムダウンが多かったのが、結構、精神的にも肉体的にも疲れた。おかげで、翌日は激しい筋肉痛であった。一般ルートとは言え、今回の縦走成功の達成感は高く、たいへん充実した山行であった。
動画も少し撮っていたので、スライドショー的に編集してみました。
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