山岳気象リスクを考える学生の会:盛会にて終了!
ヤマテンの代表である猪熊隆之さんを招いて、「山岳気象リスクを考える学生の会」が、関西学院大学西宮上ヶ原キャンパスにて1月12日(日)に開催された。
このセミナーの主催は、株式会社ヤマテン・関西学院大学体育会ワンダーフォーゲル部・関西学院大学体育会山岳部である。関西の大学だけでなく、遠くは西は九州や四国、東は関東から、ワンダーフォーゲル部、山岳部、探検部などに所属する多くの学生たちが参加した。なかには高校生の参加者もいた。私も指導者として若い学生たちに混じって参加した。
前半は、冬山における気象の話しが中心であった。だいたいは理解している内容ではあるのだが、冬型の強さを評価する基準についての話しはすぐに実践できる知識として実に大切なことであった。たとえば、等圧線の幅が東京と名古屋の距離よりも狭ければ、風速10〜15m/sの強風となり、大阪と名古屋の距離よりも狭ければ、さらに強い冬型となり、風速25m/s以上の強風となる。降雪量も500hPa(高度5500m付近)の気温を見ることで推定できる。-30℃以下であれば大雪となり、-36℃以下であればドカ雪となる。700hPa面(高度3000m付近)の気温ならば、-21℃以下で大雪、-24℃以下でドカ雪となる。また低気圧が24hで10hPa以上発達すれば、天気は悪化し、20hPa以上発達すれば行動不能になるぐらいの悪天になる。上空の気温などの専門天気図は、ヤマテンの会員になれば利用できる。
後半は、冬季の乗鞍岳での合宿において山頂アタック時に低体温症になった事例を取り上げて、気象と行動の面から吟味することが行われた。1件の重大事故の背景には多数のヒヤリハットがあり、ヒヤリハットのレベルで対策を講じることができれば重大事故を防ぐことができる。その意味で山行後に反省の場を持つことは重要である。
今更ながらではあるが、同様な事例を同じ乗鞍岳で起こしたことを思い出した。もう8年前の2016年の年末であるが、山仲間たちと乗鞍岳への山スキーに日帰りで行ったときのことである(2016年12月30日の記録)。リンクのブログではそのことにはほとんど触れなかったが、詳細は以下である。
その日は晴天ではあったが、気温は低く風が強い日であった。乗鞍高原スキー場からツアーコースを進んで位ヶ原に出ると、強風でスケートリンク状態であった。この時点で予定していた滑り台(富士見岳と摩利支天岳の間の小ピーク)方面へ進むことはやめて、屋根坂(位ヶ原〜位ヶ原山荘)を滑ることにした。強風の中をドロップ地点まで移動する間に同行者が震えが止まらない状態になった。震えは低体温症の初期症状で、症状が進むと行動不能に陥ってしまう。震えが出た時点で適当な対策を講じれば症状が進むのを止めることができる。とりあえず富士見坂まで滑り、近くにある位ヶ原山荘が営業をしていたので、彼には暖を取ってもらうことにした。その間、元気な者は富士見坂方面に登り返して1本滑ったが、この時に上部にいたボーダーが斜面を切って雪崩が発生した。幸いなことにまだ下部にいた我々は雪崩に巻き込まれることはなかったが、ヒヤリハットが2つもあった日であった。
低体温症になりかけた1名は、その間に位ヶ原山荘で温かい飲み物を飲み、ストーブで暖を取ったおかげで、震えは止まり、無事下山することができた。その彼は体質的に汗かきで、位ヶ原までの登りで大量の汗をかき、アンダーウェアが濡れてしまったことが低体温症になりかけた原因であった。速乾性のアンダーウェアであったとしても、大量の汗をかけば、低体温症になる可能性は十分にある。低体温症は原因として天候ばかりが注目されるが、個人の体質なども影響してくる。パーティリーダーは、山行中のパーティメンバーの状況をよく確認しておく必要があることを今回のセミナーで改めて確認した次第である。
4時間にもわたるセミナーの終了後には、学生交流会が行われた。全国のワンダーフォーゲル部や山岳部などの山岳系クラブに所属する学生たちの交流はレベルの底上げにもつながり、大変有意義な時間だったに違いない。
学生交流会の後は、大人だけの懇親会が行われた。関西学院大学山岳部出身だった中島健郎さんの話しや学生への指導方法などの話題もありで、たいへんディープな時間であった。
ワンダーフォーゲル部や山岳部など大学の山岳系クラブでは、コロナ禍での弱体化、指導者がいない、パートナーがいない、部員不足などの問題を抱えている。今回のような機会は、大学のクラブの枠を越えての技術指導や交流につながり、大学間の連携を深める。それによって学生たちの安全の向上やレベルの底上げにつながれば幸いである。







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