« お盆休みに黒部川上ノ廊下遡行:2度目の上ノ廊下・高天原温泉・読売新道(概要) | Main | 大東新道にて高天原温泉へ:秘湯入浴と台風通過による停滞 »

August 26, 2018

瞬時に濁流と化す黒部川上ノ廊下:2年ぶり2度目の遡行にて

お盆休みの7日間にわたる山行の概要についてはすでにアップ済みであるので、個々の記録の詳細についてアップしていくことにする。まずは黒部川上ノ廊下の遡行についての記録です。

【日程】2018年8月12日(日)〜14日(火)
【山域】北ア・南部
【渓谷名】黒部川 上ノ廊下
【メンバー】しっきー、マメゾウムシ
【天候】8/12 曇り時々晴れもしくは雨、8/13 曇り時々雨、8/14 晴れのち曇り時々雨
【コースタイム】
8/12 黒部ダム7:16〜平ノ小屋10:51-11:52〜奥黒部ヒュッテ14:12-39〜C1(熊ノ沢出合付近)15:07
8/13 C1 6:22〜下ノ黒ビンガ7:38〜口元ノタル沢出合8:09〜廊下沢出合9:55〜上ノ黒ビンガ10:48〜金作谷出合12:17〜濁流化による停滞13:25-14:28〜C2(岩棚上)15:23
8/14 C2 6:25〜岩苔小谷出合8:31-9:00〜立石寄岩10:58〜B沢出合14:05〜C3(A沢出合付近)14:44

今年の夏は、人の多いお盆休みずらして休暇を取り、のんびりと釣り中心の沢登りでもしようと当初は考えていた。 そこにBC仲間のしっきーから、「上ノ廊下から高天原温泉、そして読売新道で戻るはどう?」とお誘いがあった。上ノ廊下は2年前の渇水時にさほど苦労なく遡行できた(2016年8月の記録)。ただし、その時は泳ぎが達者なニシがいて、彼が難所を突破してくれたおかげで、水線通しに行けたのであった。私の泳力ではとてもリードできる自信はなかった。それでしっきーには、「泳ぎと徒渉の練習をしていないと難しい」と返事をし、別の行き先を考えてもらうようにした。よく考えてみると、今年は夏に雨が降らず、2年前の時以上に渇水である。ひょっとしたらさほど苦労せずに行けるかもとつい考えてしまったのが、今回、2年ぶりに上ノ廊下に行くことになった経緯である。

前回と異なるのは、私がすべてリードしなければならないことであった。なぜならばしっきーはそこまでの沢の経験がないからである。あまりに上ノ廊下行きが直前に決まったので、2年前に行ったような泳ぎと徒渉の練習をする時間もなかった。はたして私の泳力で突破できるのかは正直自信が無かった。そこで、口元ノタル沢出合のゴルジュを越えられなければ、潔く東沢に転進し、イワナを釣りながらのんびりと遡行すればよいやと気楽に考えることにした。上ノ廊下は滝がないので、撤退も流れていけばよいだけである。無理ならば引き返せばよいのである。

行程としては、黒部ダムから上ノ廊下、大東新道で高天原温泉へ、温泉沢、読売新道にて奥黒部ヒュッテに戻り、釣りをしながら針ノ木谷を遡行し、針ノ木峠を越えて扇沢駅に戻る6日間の山行とした。直前になっての不安材料は、天気が不安定であること、特に台風15号の動向である。日程が遅れた場合は、針ノ木谷をカットして黒部ダムに下山することにした。

8月11日の夕に大阪を出発し、東京から高速バスで移動してきたしっきーを夜にみどり湖PAでピックアップし、信濃大町の西友で買い物をしてから扇沢駅に向かった。幸いなことに無料駐車場に車を駐めることができた。長期山行になるので、これは重要なことである。高速代の深夜割引を犠牲にして、0時前に扇沢駅に到着できたことが大きい。その夜は軽く晩酌をしてから眠りについた。

**************************************
8月12日:黒部ダム〜奥黒部ヒュッテ〜C1(熊ノ沢出合付近)

Img_3456

翌朝は早くから、扇沢駅6:30発の始発に乗るためのチケットを買う行列ができていた。我々も並んで黒部ダムへの片道のチケットを購入し、今年で最後となるトローリーバスに乗り込んだ。来年からは電気バスになるそうだ。

Img_3462

スキーがないと、トローリーバス乗車も楽だ。

P8120001

黒部ダムは観光放水中。

Img_3457

遊覧船乗り場で用を足してから、平の渡しまでの湖岸の道に入った。

Img_3458

黒部ダムを振り返る。

P8120002

湖岸の道はアップダウンの繰り返しで、一部に崩れているところもあった。中ノ谷まで来たところで、10時の平の渡しの渡船には間に合わないことがわかり、大休止とした。中ノ谷では釣り人が竿を垂れていた。

P8120005

平ノ小屋に到着。実は2013年の小屋開け時に手伝いにきたことがある小屋である。渡船までの1時間の待ち時間を、管理人のサトさんと会話したりなどして過ごした。時々雨がパラついたのが、これから待っている遡行の不安材料となった。

Img_3475

ちなみに渡船の時間です。12時発に乗船します。

P8120007

1回では全員が乗り切れなかったので、私たちは第2便を待つことに。

P8120009

乗船名簿に記入し、ライフジャケットをつけて対岸へ。

P8120011

10分ほどで対岸へ。水位がかなり低かったので、登山道までの登りが長い。

Img_3486

再びアップダウンのある湖岸の道を進み、2時間ほどで奥黒部ヒュッテに到着。

P8120013

東沢出合で沢装備になり、いよいよ入渓。

P8120014

黒部川に出ました。先行パーティーもいる。水温は低くはなく、水量は2年前と同じぐらいか、少し多いぐらいに感じた。

P8130017

熊ノ沢出合付近の台地の上にツエルトを張る。釣りに出かけるが先行者が多いためか釣れず。熊ノ沢に入ってみるが、藪沢で釣りにならず、結局、ボウズであった。隣に幕営したパーティーは大きなニジマスを餌釣りで釣り上げたようだ。

P8120016

それでも焚き火はやらねば。夕方に少し雨が降ったが、ずっと降り続くことはなかった。

**************************************
8月13日:C1〜下ノ黒ビンガ〜上ノ黒ビンガ〜金作谷出合〜C2(岩棚上)

P8130019

翌朝は予定より30分ほど寝坊してしまったが、天気は曇りで、水量は特に増えてはいなかった。予定通り進むことにする。隣で幕営していたパーティーはすでに出発していて、すっかり遅れを取ってしまった。

P8130022

早速、徒渉が始まる。今日・明日は泳ぎと徒渉が中心になるので、ウェットスーツを着用している。ちなみに私はモンベル製のライトネオプレンの上下である。

P8130023

いよいよ下ノ黒ビンガが見えてきた。「ビンガ!ビンガー!」と歌うが、しっきーの反応は悪し。ジェネレーションギャップを感じる。

P8130024

最初のへつりに泳ぎ。しっきーが泳いでいる時に彼女のヘルメットがずれて、なんと溺れかける。まあ問題はなかったが、ここで難儀しているようでは先には進めない。東沢に転進という思いが強くわき上がるが、とりあえず口元ノタル沢出合までは行ってみることにする。

P8130026

枝沢にあった雪渓。

P8130027

いよいよ最初の関門である口元ノタル沢出合だ。

P8130028

正面がその関門のゴルジュだ。まずは左岸をヤツメウナギ泳法で進もうとしたが、流れに押し戻される。高巻きも考えたが、登りすぎると下りれなくなるかもしれない。よく見ると、川の中央が砂利で埋まっていて浅くなっている。この中央を歩き、背が立たなくなった辺りで、左岸に泳いだら突破できた。あとはへつりで進める。しっきーは身長的に川の中央を歩くのは無理そうなので、フローティングロープを投げて、引っ張り上げた。ちょうどこの突破の際に、上流から下ってきた男性2名のパーティーとすれ違った。

P8130029

これで一段落と思ったが、急流が我々の行く手を塞いでいた。ここを強引にスクラム徒渉で突破しようと試みたが、流れに負けて流されてしまった。幸いなことに2人とも途中でなんとか止まったが、ちょっと強引すぎたことを反省する。急流ではあるが、流れの中に足を置ける岩があることに気づく。その岩を伝っていくことで、ここは突破することができた。口元ノタル沢出合のゴルジュを突破してしまったので、もう進むしかない。東沢でのんびりイワナ三昧遡行は、これで無くなったわけである。

P8130031_2

左岸に廊下沢を越える。

P8130032_2

しばらくは広河原の平凡な河原歩きとなる。時々雨がパラつき、遠くで雷鳴が鳴っているのが聞こえる。水量が増えないか少々不安となる。

P8130036

やがて前方に上ノ黒ビンガが見えてきた。

P8130038

いよいよ次の核心に入る。

P8130040

このあたりは枝沢からの滝が見事だ。

P8130041

この先で行き詰まる。右岸・左岸共に壁!

P8130042

右岸を高巻いて突破しようと登ってみるが、先は急な壁で下りられない。懸垂下降の支点になるような木もない。細木に捨て縄をして元の場所に懸垂下降で戻れたが、振り出しに戻ってしまった。ちょっと強引かもしれないが、スクラム徒渉で進んでみると、あれっという感じで意外とあっさり突破できてしまった。上ノ廊下はできるかぎり高巻きせずに、水線通しで行くのが最も安全かもしれない。

P8130044

前方に金作谷出合が見えてきた。ここまで雨は降ったりやんだりだが、強くは降ってはいない。

P8130047

徒渉を繰り返しながら、金作谷出合を過ぎる。時間はまだ正午過ぎなので、まだ進むことにする。

P8130049

金作谷出合上流のゴルジュは泳ぎを強いられる。ここは左岸をへつりながら進み、右岸に泳いで渡ったような。

P8130051

左岸の枝沢の滝。

P8130052

何か水が濁ってきたような! ここは右岸をへついで左岸に泳いで渡って突破。

P8130053

水量も増えている!

P8130054

ちょうどゴルジュを突破したところで幸いだったが、水がどんどん濁ってくる!

P8130055

あっという間に濁流と化してしまった。上の廊下の中ではそんなに降水量は多くはなかったのだが、どうやら上流部で激しく雨が降ったようだ。雷鳴も鳴っていたので間違いはない。水量も増えて、流れも速くなっているので、遡行はいったん中断。いつでもエスケープできる体制で、しばらく様子を見ることにする。

P8130056

急な増水は引くのも早い。1時間ほどで水も澄んできたので、再び遡行開始。

P8130057

遡行開始したのはよいが、すぐに行き詰まる。目の前に先行パーティーが幕営している台地が見えるのだが、速い流れに遮られて、そこまで行けない。右岸から樹林帯の中を高巻いて見るが、その先で下りられない。泳いで突破しかなさそうだが、まだ水量が多い状態なので、今日の突破は諦めて、幕営地を探すことにした。

P8130058

右岸の岩棚の上に平坦地を見つけたので、そこを幕営地とした。水溜まりがあったり、岩があったりで快適ではないが、非常時なのでやむを得ない。

P8130062

19時ぐらいに再び川が濁りだした。また上流部で激しい降雨があったようだ。翌日は水が引いていることを願いたい。

P8130064

焚き火はできたが、イワナは釣れず。ファイントラックのポリゴンシールドだけでは夜は寒かった。夜半には晴れて、時々流れ星が流れるのを寝ながら眺めていた。

**************************************
8月14日:C2〜立石寄岩〜C3(A沢出合付近)

P8140066

翌朝は晴天で、上ノ廊下は平水に戻っていた。まずは前日に行き詰まった箇所へ。

P8140067

上の写真の右岸をへつり、足が付かなくなったらヤツメウナギ泳法にてしばらく進む。それから左岸へ泳いで渡るのだが、急流になる前に渡りきらないといけない。結構流されたが、なんとか左岸へ渡れた。しっきーをロープで引っ張り上げて、無事突破!

P8140069

ここもちょっと行き詰まったが、

P8140070

左岸をヘツリで突破。

P8140072

右岸に赤牛沢出合を通過。

P8140074

すぐに上ノ廊下で1番大きな支流である岩苔小谷出合となる。ここで釣りタイムとするが、先行者がすでに竿を出した後なのか、まったく反応なし。ここまで魚影さえも見ていない。

P8140075

再びゴルジュに突入すると、また行き詰まる。左岸から高巻いて見る。ザックを背負ったままでは引っかかって登れなかったので、空荷で登り、ザックをロープで引き上げる。

P8140076

その後が問題で、岩棚のバンド上のトラバースになる。足場は川側に傾いていて、ひじょうに滑りやすそう。ザックを背負ってのトラバースはバランスを取るのが難しい。中間支点用の残置ハーケンはあったが、落ちたらかなりヤバい。

なんとか冷や汗もののトラバースに成功し、あとは懸垂下降で下るだけ。ここで私が先に下りたが、なんとしっきーが下降器を持っていないことが判明。沢では下降器は必須装備だろ! 幸いなことに岩が階段状になっていたので、ロープを掴みながらクライムダウンしてもらった。抜けてから地形をよく見ると、少々多く登ることになるが、右岸の樹林を高巻いた方が安全だったかもしれない。

P8140078

左岸に枝沢の滝を見て。

P8140080

立石寄岩が右岸に見えた! これで上ノ廊下は終わり、奥ノ廊下に入る。

P8140082

正面からの立石寄岩は背後の岩壁と共に迫力がある!

P8140083

立石寄岩を背後に記念撮影!

P8140087

立石寄岩を過ぎると、しばらくは平凡な河原歩きとなる。2年前はここで2泊目をしたところだ。

P8140089

いよいよ最後のゴルジュだ。

P8140090

途中で、下降してきた同志社大学山岳部パーティー5名とすれ違う。彼らは赤牛沢遡行に向かうとのこと。私が顧問しているワンゲル部も、近いうちに学生だけで沢に行けるようになってほしいものだ。

P8140091

ゴルジュの最後の部分は、左岸を高巻いて、

P8140092

4mほどの懸垂下降。下降器はしっきーに貸して、私はロックカラビナにてムンターヒッチにて下降した。

P8140093

最後のゴルジュを振り返る!

P8140094

右岸にはすでに大東新道が合流しており、これで遡行は終了である。予定では大東新道で高天原山荘まで行く予定であったが、14時となっていたので、適当なところで幕営することにした。ようやく魚影が走り出したので、釣りをしながら幕営地探しをしたが、イワナは相変わらず釣れずだった。

P8140096

A沢出合付近でちょうど釣り人の男性が焚き火をしていたので、ご一緒することにした。男性は大阪の人であった。イワナはいるのだが、反応は鈍いとのこと。これだけ入渓者がいると、さすがにイワナの警戒心も強くなるだろう。

P8140095

砂地にツエルトを張って、なにかトイレ臭いなと思ったが、なんとその砂地がキジ場であることが判明。大東新道がすぐ横を取っていることを考えると、この臭いは人によるものらしい。河原の砂地で用を足さないように! 炊事中に急な夕立があったりと、おかげで不快な夜を過ごすことになった。やはりここでもポリゴンシールドでは寒かった。

なんとか無事に上ノ廊下の遡行を終えることができた。2年ぶり2度目の上ノ廊下の遡行であった。敗退も含めれば4回目である。今回の成功は渇水のおかげではあるが、一方で、上流部で大量の降雨があれば、瞬時に濁流化するなど、上ノ廊下の怖さも目の当たりにした。この経験を今後の沢行に活かし、今後も謙虚な姿勢で山に向き合いたいと思う。

大東新道にて高天原温泉へ:秘湯入浴と台風通過による停滞につづく

|

« お盆休みに黒部川上ノ廊下遡行:2度目の上ノ廊下・高天原温泉・読売新道(概要) | Main | 大東新道にて高天原温泉へ:秘湯入浴と台風通過による停滞 »

Comments

すごい!

結構な濁流具合やったんですね。

Posted by: かまちゃん | August 28, 2018 at 01:46 AM

岩がぶつかって火花が出るほどの増水ではありませんでしたが、瞬時に濁流と化すのは沢の怖さと思いました。

Posted by: マメゾウムシ | August 28, 2018 at 08:35 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« お盆休みに黒部川上ノ廊下遡行:2度目の上ノ廊下・高天原温泉・読売新道(概要) | Main | 大東新道にて高天原温泉へ:秘湯入浴と台風通過による停滞 »