越前甲
牛岳の翌日は福井と石川の県境にある越前甲に行きました。夏に大日沢を遡行した加賀大日山の隣の山です。
【山域】越前甲
【場所】福井県・石川県
【日時】2012年1月29日(日)
【メンバー】なべさん、しまさん、マメゾウムシ
【天 気】 晴れ
【コースタイム】国道416除雪終点7:30~稜線鞍部9:24~越前甲山頂10:44~エントリー地点10:51-11:20~北面最低点11:39~稜線鞍部12:18~国道416除雪終点12:50
今日のメンバーは前日のしまさんに加えて、お馴染みのなべさんの計3人。道の駅しらやまさんに6時に待ち合わせし、勝山へ向かった。
登山口は国道416号の除雪終了地点。この国道は石川県側にもあるのだが、福井と石川の間は車の通行ができない。出発時は気温が低く、北からの風も強かった。
7時過ぎに出発。しばらく林道を歩く。林道には昨日のものと思われるトレースが残っている。今日のラッセルは楽そうだ。
出発して30分程で林道を離れ、杉林の中を登る。雪がモナカ気味なのが気になる。ここから、ラッセルをなべさんから私に代わる。杉林を抜けると越前甲が眼前に現れた。高圧電線が横切っているのは少々見映えが悪い。
越前甲の稜線鞍部を目指して進む。南斜面で日射と風の影響を受けるためか、表面はパック気味である。昨日の快適パウダーとはだいぶ違う。所々、雪庇などが崩れて起きた小規模な点発生雪崩の跡がある。稜線鞍部が近づくにつれて、木の少ない斜面をトラバース気味に進むようになるので、念のため、間隔を開けて進む。
標高980mの稜線鞍部に到着すると北面から強い風が吹き付けていた。
山頂から東に伸びる稜線の南側には雪庇があるので、稜線の北側の樹林帯の中を進む。雪はパックされているが、カリカリではない。
標高1100mぐらいから樹林帯が狭くなり、傾斜も急になってきたので、さらに北側の無木立斜面にまで出て、シール登行をする。ところがこれは失敗だった。明らかに雪面がスラブ化していて、自分が歩く振動が雪に伝播していくのがわかる。案の定、自分が進む前方に直線的にシューティングクラックが入った。これはやばい。このままでは面発生表層雪崩を誘発する危険性が高い。間隔も開けていなかったので、雪崩れたならば全員巻き込まれるだろう。みんなに「雪がやばい」と伝えて、とりあえず、斜め前方上の木のあるところを目指して慎重に進む。あとは木と木ををつなげながら、無木立斜面を避けて、なるべく稜線に沿って進んだ。雪は板状になって割れることからも、積雪はかなり悪い状況だ。
この場所は東斜面であるが、風と日射の影響を強く受ける斜面のようだ。おそらく前日からの強風によって新雪表面がスラブ化したのだろう。また昨晩は雪があまり降らずに、気温が低かったため、スラブ化した層とその下の新雪の層との間に再結晶化した密度の低い脆弱な雪の層ができたと思われる。
ヒヤヒヤものであったが、やがて斜度もゆるみ、なんとか無事に山頂についた。一安心だ。山頂からは白山が見える。
予定では山頂から北面の谷を滑るつもりであった。しかし雪の状態を考えると、往路を樹林に沿って戻るのが教科書通りだろう。だが登ってきた斜面の雪の状況は最悪だ。通りたくないというのもある。
念のため、北面の谷へのエントリーポイントで、ピットを掘ってみた。
積雪深はプローブで測ったところ、3m以上。新雪が1m以上あり、その中には弱層は確認できなかった。危険なのは、おそらく風の影響を強く受ける東斜面に限るのかもしれない。とりあえず、北面の谷を当初の予定通りに滑ることにした。しかし、リスクがないとは言いきれないので、なべさんを先頭に雪の状態を確かめつつ、1人ずつ間隔を開けて滑っていった。
滑走開始当初は、雪の表面が若干固かったが、標高を下げるにつれて雪は快適なパウダーと変わっていった。
テレマークターンは楽しい!
しまさんはBCクロカンでスイスイと!
まったく問題はなかった。この選択は大当りだった。谷の中は風もなく穏やかだった。往路を戻っていたならば、樹林の中を慎重に高度を下げるだけだったかもしれない。
標高870mぐらいの斜度が緩くなったところから、シールを付けて稜線鞍部を目指して登り返した。
40分程で稜線鞍部に到着。白山の眺めがいい。
あとは往路のトレースを辿って下るのみ。雪はパック気味だったが、それほど滑走に支障はなかった。
わずか30分で駐車地点に到着。登りはヒヤヒヤものだったが、結果としては満足な滑走ができた。北陸の渋い山を案内してくれる’しまさん’と’なべさん’に感謝である。
下山後は勝山の横倉鉱泉という温泉に行ってみたが、残念ながら営業していなかった。仕方なく、しまさん、はまさんと別れて、そのまま帰路についた。
長くバックカントリースキーをやっていると、やはり積雪が不安定な時に遭遇することがある。私の経験としては、2009年4月に行った会津駒ヶ岳以来の危ない積雪であった。この時は、小規模ながらスキーカットで雪崩が起きた。今回の経験は、スラブの特性を知ることができたという点では、ある意味勉強になった。今後、雪崩事故に遭わないためにも、この経験をリスクマネージメントに役立てていくつもりである。
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