性比の進化
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先週から新年の講義が始まっています。1年生の生物学IIは今日が新年最初の講義です。今日の内容は「性比の進化」です。多くの生物の性比(オスとメスの比率)は1:1ですが、皆さんはなぜ性比が1:1になるかということは考えたことがあるでしょうか? 実はこれには進化的な理由があるのです。
この説明のためにはメス親の立場から考える必要があります。集団全体の増殖率ということであれば、メス親は子の性比をメスに偏って産んだ方がよいはずです。ところが実際にはそうではありません。これは生物個体は集団全体の利益のために振る舞わないことを意味します。以前は生物には種族維持という本能があるとよく聞かされたものですが、今ではそのような本能は生物にはないと考えるのが一般的です。性比の場合もそうですが、種族繁栄論では生物の進化を説明できないのです。
それではどのように考えるのかというと、個体の適応度の観点から考えるのです。適応度は簡単に言うと、残すことができた子孫の数のことです。この適応度が増加する方向に生物は進化していくのです。たとえば、ある生物集団が極端にメスに偏った性比の場合を考えてみます。メス親はメスの子よりもオスの子を多く産んだ方が有利になります。なぜならば、オスの子は多くのメスと交配できるため、メス親から見た孫の数がより多くなるからです。そのような状況では、オスに偏った性比で子を産むメスの遺伝子がどんどん増えていくことになります。今度は逆に極端に性比がオスに偏った集団の場合を考えてみます。この場合にはむしろオスの子よりもメスの子を多く産んだ方が有利になります。どちらの場合も少数派の方が相対的に適応度が高くなるため、少数派の頻度が増加する方向に自然選択が作用します。このような自然選択を頻度異存選択といいますが、ちょうど性比が1:1となった時に適応度のバランスが取れるのです。
以上が多くの生物の性比が1:1であることの説明です。今日の講義では、さらに寄生バチのように極端に性比がメスに偏る場合についても説明しました。これは詳しい説明を省きますが、メスをめぐるオス間の競争が激しいため、性比をメスに偏らせて子を産む方が有利になるからであり、この状況を局所的配偶者競争といいます。
ざっとこんな話をしましたが、比較的反応がよかったように思います。もうすぐ学期末試験ですが、これまでの内容も含めて正確に理解してくれているとよいのですが。
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