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December 21, 2005

表現型可塑性研究が進むべき方向は?

今日は1限に講義がなかったので、のんびりと出勤です。午前中は相変わらず生態学会大会企画委員会関係のメールの対応に追われる。そろそろ新潟大会のプログラム原稿を印刷所に入稿する時期で、原稿の最終チェックなどに追われました。

大会企画委員会はシンポジウム企画部会を強化するために、この部会の人員を現在の3人から7人に増員する予定です。企画シンポの企画、公募シンポと自由集会の受付、プログラム原稿の作成、データの管理などさすがに3人ではしんどい仕事でした。7人になれば、分業ができますので、だいぶ楽になりそうです。生態学会の現状に憂えている若手研究者の皆さん、企画シンポや公募シンポの内容やあり方を一緒に検討しませんか?今日のメールでは候補者が何人かあがっておりました。

このようなメールのやり取りや雑用だけでもう夕方です。なんとか夕方に論文を読む時間が取れました。読んだのはTREEの最新号に掲載された表現型可塑性研究についてのレビュー「Miner, B. G. et al. (2005) Ecological consequences of phenotypic plasticity. TREE 20: 685-692」です。

先日にもTREEの9月号に掲載されたPigliucciの表現型可塑性研究についてのレビューを読みましたが、私にとってはMinerらのレビューの方が実に有益な内容でした。Pigliucciは、表現型可塑性研究者であれば誰でも考えられるこの研究の方向性を、毒舌とともに主張しただけです。読んでいてちょっと不快でもありました。一方、Minerらは、表現型可塑性研究者が重要でありながらこれまであまり注目してこなかったテーマをズバッと指摘しており、実に読んでいて気分がよいものでした。

これだけではあまりに内容が抽象的なので、簡単にMinerらの論文の内容を紹介しておきます。生物個体に見られる表現型可塑性が生物間相互作用あるいは環境との相互作用を変えるというものです。当然、その変化は個体群および群集あるいは生態系にまで影響が及ぶと考えられます。表現型可塑性の影響は直接効果だけでなく、他の生物種を介して間接的に影響を及ぼす場合もあります。たとえば、ヤナギ類は撹乱や激しい食害にあうと、シュートを再成長させて新しい葉を出すという可塑的反応を示しますが、この反応が植食性昆虫の個体群動態に影響し、さらには捕食者の個体群動態、すなわち群集全体の動態に影響が及ぶと考えられます。

とかく最近の進化生態学では、ほとんどの研究者が、将来の方向性として、研究対象である形質(表現型可塑性)を支配する遺伝子の探索や遺伝的基盤の解明と主張する。ミクロの方向ばかりに目を向けている。ところがMinerらは目を向けている方向が逆である。よりマクロな方向で将来の発展を考えているのである。このような視点はほとんどの進化生態学者に欠けているのではないだろうか。この論文を読んでいて、実に目から鱗が取れるような思いであった。

私は表現型可塑性の研究に取り組む一方で、最近では生物間相互作用や間接効果などの研究も行っていました。しかしながら、この両者を統合した研究を行うところまではまったく考えが及びませんでした。やはり雑用に追われてばかりいると視野が狭くなってしまいます。うっかりしていたという感じです。これはまさに私がこれから行うべきテーマと強く思いました。このような研究はまだ少ないことからも、うまくいけば一発当てられる可能性はかなり高いでしょう。

当面のところ解決すべき問題は、以下です。
1. 表現型可塑性が生態的パターンおよび個体レベル、個体群レベル、群集レベルのプロセスを本当に変えるものか?
2. 実験デザインをどう立てるか?

おそらく2が一番の問題です。この研究を行うのにふさわしい実験材料と実験デザインをしばらくは考えてみたいと思います。

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