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December 10, 2005

科学者はマニアックで暗い?

 昨日の朝日新聞夕刊に「理科大好きでも科学者イヤ 中3男子56%・女子81%」という記事が載った。おまけに日本の子どもは「科学者はマニアックで暗い」というイメージを描く傾向が強いようだ。これは神戸大の小川賢教授(科学教育)の調査結果だそうだ。

 日本のサイエンスの将来を考えるとひじょうに危惧する事態である。科学者という職業に就いているものとしても無視することはできない。確かに大阪女子大の学生を見ても、学部ではまあ勉強するが、いざ卒業研究で研究室に配属されると、とても真剣に研究というレベルではない。アルバイトはするし、遊びには行くし、俗社会に流されっぱなしである。大学院博士課程まで進学して研究者を目指そうという者はひじょうに少ない。どうやら彼女たちも科学者にはなりたくないと考えざるを得ない。

 この状況は変えねばならない。まずは科学者のイメージを変えねばならない。では、なぜ、「科学者はマニアックで暗い」と日本の子どもは思うようになってしまったのだろうか?

 確かにマニアックな人は多いかもしれない。私なんかは研究材料へのこだわりは特にないが、昆虫生態学者の中にはチョウマニア、甲虫マニアという研究材料マニアな人達もいる。一般常識のない人も多い。特に責任感がない人がいると大変である。そのような人達は一切の職場や学会などの雑用をせずに好きなことをやりまくる。その尻ぬぐいをするのが常識と責任感のある人達である。性格がよく人格もある人達には次々と雑用が回されてくる。そうなると自分の研究はほとんどできなくなってしまう。結果として、科学者の世界では、常識のないマニアックな人達の方が業績を多く出すことになり、目立つことになってしまう。そのような人達がマスコミにでるから、「科学者はマニアックで暗い」と思われるようになってしまうのである。

 これは半分冗談であるが、半分は当たっているように思う。ただし、科学者の中には人格的にも優れた人がいるし、さまざまな学会役員を引き受けながら多くの業績を出している人もいることは確かである。だが、現在の大学や学会のシステムに問題があることも確かである。やはり能力があり人望もある特定の人達に雑用が集中していることは明らかである。私の恩師はあまりに仕事を多く抱え込んだがために脳出血で倒れてしまった。幸い、大事にはいたらなかったからよかったものの、このような状況はなんとかならないだろうか?

 ちょっと脱線してしまったが、「科学者はマニアックで暗い」についてはマスコミのせいもあるだろう。 確かに「トリビアの泉」や「探偵ナイトスクープ」に科学者が出演することがあるが、どうもマニアックに見えるように演出されている感じもある。また、どうも子ども番組で出てくる科学者は、白髪頭で、分厚いメガネをかけ、白衣を着、あやしい実験をしているという場合が多い。もっとかっこよく描いてほしいものである。

 それから小・中の先生の責任も大きいように思う。やはり理科の面白さを伝えられるのは、研究をした経験があってのものである。ところが現在は教育実習の負担が大きいため、卒業研究を中断して実習にいくことになる。そのためしっかり研究をしないまま、研究の面白さをしらないまま教師になってしまうものも少なくはない。教育実習の負担を大きくするだけで教師の質が高くなるとは思えない。むしろ卒業研究に専念させるカリキュラムを模索するべきではないだろうか。

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