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December 07, 2005

表現型可塑性

 今日の1限は大仙キャンパスで、「生態学2」の講義を、大阪女子大学最後の学生となる2年生に行いました。前日の府大の学生に比べると女子大の学生の方が反応がまだあります。今日のメインテーマは「表現型可塑性」です。「表現型可塑性」は同一遺伝子型が環境条件の変化に応じて表現型を変える現象のことをいいますが、これを正確に学生に理解させることはなかなか難しいです。いくら説明しても、試験になると遺伝的変異を伴う表現型変異と混同している答案が実に多い。この「表現型可塑性」は、本来の私の研究テーマです。ここ数年は「表現型可塑性」から離れて、「寄主選好性」や「種間相互作用」などの研究に手を出していますが、いまでも最も興味のあるテーマです。個人的な思いこみかもしれませんが、このテーマで一発当てられるアイディアを私は持っています。では、なぜこのテーマで研究ができなかったかというと、このテーマを理解できる学生がこれまでいなかったからです。しかし、来年は大きな希望が持てそうです。外部から院生が1人入ってきます。このテーマの詳細はとりあえずまだ秘密にしておきます。研究材料だけ言っておきます。キアゲハです。
 話しをまた講義に戻します。表現型可塑性の例として、昆虫の休眠、相変異や翅多型、チョウの季節型などを紹介します。これらは時間的に変動する環境への適応と考えられていますので、適応的な表現型可塑性と呼ばれています。ここでもっと具体的な例として、私が院生の時に研究したシャープマメゾウムシの例を毎年話しています。世代間で生活史形質の違いが見られるという現象ですが、これは生活史形質間のエネルギー配分を世代間で変えるというもので、寄主植物であるクララへの適応で理解することができます。詳細については、Ishihara and Shimada (1995) Functional Ecology 9: 618-624をご覧下さい。この論文は結構よく引用されているようです。世代間で生活史形質が変化する現象はイチモンジセセリの卵サイズでも知られています。私としては昆虫一般に広く見られてもよい現象と思うのですが、実はそれほど報告例が多くありません。どうやらまださほど調べられていないようです。このあたりにはまだおもしろそうな研究材料とテーマがごろごろしているかもしれません。宣伝になりますが、2006年3月の生態学会新潟大会では「表現型の可塑性:その適応的意義の探求」という公募シンポが開かれます。ここで私はイチモンジセセリの卵サイズの可塑性について研究している世古智一さん(近畿中国四国農業研究センター)と、昆虫に見られるこのような季節適応としての表現型可塑性について共同発表をする予定です。
 今晩は最初の忘年会です。専攻の忘年会です。一応、表向きは全体会議および懇親会となっていますが、事実上は忘年会でしょう。明日も1限に講義がありますので、今晩は飲むのは少し控えめにしようと思います。

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