季節適応としての昆虫の表現型可塑性
28日に仕事納めしてからは自宅に引きこもっています。
とりあえず、仕事納めまでに、来年度の講義のシラバスと生態学会新潟大会で行うシンポジウム講演の要旨の作成を終えることができました。
卒論の初稿も無事、学生から受け取ることができました。
卒論の出来具合で、こちらの負担が変わってきますが、なんとか1月7日までにはコメントを添えて返却したいところです。
ついでですので、生態学会新潟大会で私が行うシンポジウム講演の要旨を公開しておきます。
シンポジウム名は「表現型の可塑性:その適応的意義の探求(企画責任者:入江貴博(九州大学理学部)・岸田治(北海道大学大学院水産科学院)・工藤洋(神戸大学理学部))」です。
発表は世古さんと共同で行います。
世古さん、要旨へのコメントどうも有り難うございました。
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季節適応としての昆虫の表現型可塑性
o石原道博(大阪府立大学大学院理学系研究科)・世古智一(近畿中国四国農業研究センター)
表現型可塑性は昆虫では翅多型や季節型および光周期による休眠誘導などの現象として一般的に知られている。これらの可塑性は異なる季節に出現する世代の間で見られ、季節的に変動する環境条件に多化性の昆虫が適応した結果、進化したと考えられている。しかしながら、これまでの研究は、これらの可塑性が生じる生理的メカニズムについて調べたものばかりが目立ち、可塑性の適応的意義まで厳密に調べた研究はひじょうに少ない。表現型可塑性に適応的意義があるかどうかを明らかにすることは、表現型可塑性の進化や維持コストを考えるうえでも重要なことである。
本講演では、イチモンジセセリとシャープマメゾウムシの2種の多化性昆虫を対象に、世代間で見られる表現型可塑性が季節的な環境変化に適応したものであることを示す研究例を紹介する。イチモンジセセリでは、秋に出現する世代のメス成虫は春及び夏に出現する世代のメス成虫に比べてかなり大きな卵を産む。また、この世代が野外で遭遇する日長・温度条件下で幼虫を飼育すると、他の世代のものよりも大卵少産の繁殖配分パターンを示す。シャープマメゾウムシでは、春に出現する越冬世代成虫は繁殖よりも寿命を長くする方向に、夏や秋に出現する世代の成虫は寿命よりも繁殖に多くのエネルギーを配分している。これらの表現型可塑性は、世代間で生活史形質間のエネルギー配分量の割合が変化するものであり、寄主植物のフェノロジーおよび寄主植物の質の季節変化に対する適応に深く関与していると考えられる。これらの研究例を含めて、季節適応としての昆虫の表現型可塑性に関する研究が今後向かうべきところはどこかについて議論したい。
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今日の夜から実家へ車で帰省します。まずは私の神奈川県川崎の実家へ2泊、その後、かみさんの実家へ2泊して戻る予定です。行きは東名で、帰りは中央道の予定で、できれば帰りにスキー場にでもよることができればと考えています。
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